大阪地方裁判所 昭和32年(ワ)557号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔事実〕被告YがAに対する仮差押決定に基き動産十数点につき仮差押の執行をしたところ、原告Xより自分が右動産の所有者であるとして第三者異議の訴を起した。ところが、Yは仮に本件動産の所有者がXであるとしても、Xは右仮差押の被保全権利であるAのYに対する約束手形金の支払債務を連帯保証するとともに、右債務が弁済されるまで右保全執行を維持することをYに対して誓約しているから、本訴は失当であると主張する。
〔判断〕裁判所は、まず右保全執行を維持する旨の誓約に関する主張から判断を進めることゝし、その誓約の趣旨及びその第三者異議の訴に与える影響について次のように判示し、結局右誓約(特約)を認めたうえ、本訴を不適法なものとして却下している。
「右の誓約は右A若くは保証人たるXが債務を任意に弁済するまでの間またはYが右A若くはXに対する確定判決等本案の債務名義を得てその本執行をすることにより弁済の結果を得るまでの間本件執行の対象たる物件を処分する等により散逸せしめず、従つて右執行の排除を求める訴も提起しないことを承諾する趣旨を含むものと解することができ、訴権は公権であるけれども個々の訴を提起するかどうかはもとより個人の任意にかかつており、取引の必要上自ら個々の訴権の行使を制限することを認めても別段弊害はないと考えられるから、執行の排除を求める訴をある期間提起しないことの承諾を含む右のような契約も別に違法性を帯びるものではなく有効であると解するのが相当である。すでに有効としてその契約から生ずる効果を法が保護すべきである以上右の契約に違反してXが本件執行の排除を求める訴を提起した場合には、Xに対し単に債務不履行による損害賠償の責任を科するに止まらず、その請求はもはや法の保護に値せず権利保護の資格を喪失しているものとし、その訴を不適法として却下すべきものと解するのが相当である。けだしそうしなければ右のような契約を有効として保護する実益は殆んど失われてしまうからである。」